当事者風小説
【後藤正樹・その1】僕がそのDVDを発見した日は、八月十八日。粘りつくような熱帯夜に耐え切れず、寝床から這いずり出し、ちょうど水を飲みに台所へ向かおうとした時だった。 最近、お姉ちゃんはスマホでやけにうるさい動画ばかり見ているし、お母さんは…
すれ違ったおばさんの、顔が、虎だった。 いや。正確には、虎じゃない。虎の着ぐるみだった。秋らしくマスタード色のコートを着たおばさんの顔の部分が、まるまる、虎の着ぐるみの顔になっていたのだ。 異世界の物体に、心臓がドクンドクンと熱くなる。後ろ…